葛飾北斎、浮世絵界の王様。最後まで本当の絵を描くことができなかった?【a】


「せめてもう10年、いや、あと5年でもいい、生きることができたら、わたしは本当の絵を描くことができるのだが」 

葛飾北斎が死の間際に言った言葉である。 日本を代表する浮世絵画家の葛飾北斎であるが自分が納得する絵は描くことはなく一生を終えたのかもしれない。

浮世絵界の王様、葛飾北斎とは?

葛飾 北斎(かつしか ほくさい、1760年-1849))は、江戸時代後期の浮世絵師。化政文化をそして日本を代表する浮世画家である。  

代表作には『富嶽三十六景』や『北斎漫画』があり、神奈川沖浪裏の浪と富士山が織りなす風景版画はもはや日本人の心と言ってもいいかもしれない。 

北斎の驚くべき点はその作品の数で生涯で3万点を超える作品を残した。森羅万象を描いたと言われている。世界中の人々を魅了した作品を作った。 


しかし一方で経済的な困窮時期も多く唐辛子売りのバイトをしながら浮世絵を描いていた時期もあると言う。 長生きをしたことでも知られており、当時としてはかなり高齢の88歳まで生きた。

浮世絵に風景画を持ち込んだ

当時の浮世は風景はあくまでも背景であり、メインになる題材ではなかった。しかし北斎は他の派の絵やオランダの風景画を学び風景そのものを題材にすることを学んだ。

そうして出来上がったのが「富嶽三十六景」である。


富嶽三十六景 神奈川沖浪裏


見たことがいない日本人などいないのではないかと思う程の名作である。荒れ狂う海に船が揺られ、その奥に富士山が見える構成は画期的で見る人惹きつける。

富嶽三十六景は50代になり初めて旅にでかけた北斎が各地から見える富士山に感動を覚え、描いたものだ。何年もの間、構成を練り描いたものだ。

その波の描写はハイスピードカメラで撮られた波に酷似していると言われており、その観察眼の凄さが感じられる。

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なんでも描いた北斎

北斎は森羅万象を描いたと言われるように様ざまなものを描いた。そんなものまで?と変わったものも描いている。

お岩さん

北斎が描いた妖怪だ。この作品も一度は見たことがあるのではないだろうか?妖怪シリーズは100枚のシリーズであったが、現存しているものは5枚である

凧と海女


春画を多く描いていた事でも知られているのが北斎である。この一枚も衝撃の一枚だ。女性が巨大なタコに襲われている。現代にも残る触手ものの原点であろうか?



北斎漫画


北斎が気の向くままに描いたと言われているのが北斎漫画である。スケッチやメモ的要素が強かったのか?

人物、風俗、動植物、妖怪まで様々なものが描かれているその中には現代の漫画の原点ではないかと言われる。民衆の表情をコマにわけて描いている。

本当の絵は描くことができなかった

「せめてもう10年、いや、あと5年でもいい、生きることができたら、わたしは本当の絵を描くことができるのだが」

これは北斎が亡くなる直前に言った言葉だと言われている。北斎の作品の真髄はその晩年期にあると言われている。

私は6歳の頃から、ものの姿を絵に写してきた。50歳の頃からは随分たくさんの絵や本を出したが、よく考えてみると70歳までに描いたものには、ろくな絵はない。73歳になってどうやら、鳥やけだものや、虫や魚の本当の形とか、草木の生きている姿とかが分かってきた。

だから80歳になるとずっと進歩し90歳になったらいっそう奥まで見極めることができ100歳になれば思い通りに描けるだろうし、110歳になったらどんなものも生きているように描けるようになろう。どうぞ長生きされて、この私の言葉が嘘でないことを確かめて頂きたいものである」。

こちらも北斎の言葉である。富嶽三十六景を発表しのは72歳の頃である。その富嶽三十六景ですら本物ではないということであろうか?北斎80歳の頃の作品をいくつか紹介しよう。

雪中虎図

コレは北斎88歳の頃の作品である。雪の中虎の絵である。北斎が亡くなる数ヶ月前に描いたと言われる作品だ。北斎の言葉からすればコレが北斎の最高傑作と言ってもいいかもしれない。

虎の躍動感が今までに見たことがないほど感じる。まさに今にも動き出しそうだ。表情も笑っているようにも感じられ、不思議な印象である。

弘法大師修法図



東京都の西新井大師に収蔵されている肉筆画だ。北斎83歳~86歳の頃の作品と言われている。弘法大師が法力を持って、鬼を調伏する図は当時の縁起物だ。

背景の黒に圧倒される1枚だ。奥深さと迫力を感じる。

まとめ

全てを浮世絵に捧げ、最高の浮世絵となった北斎。彼の最も突出した才能は「いつなんどきでも絵を書き続けた」ことであろう。
自らを「画狂人」と呼んだりし餓死してでも絵は書き続けると宣言した。

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死の間際まで制作を続けていたことからもその意欲が途切れることがなかった事がわかる。才能もあったのではあろうが、その続ける力が北斎の魅力の原点であろう。

記事協力:http://artmatome.com/
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