最古の漫画?謎のユーモアと風刺に満ちた絵巻物、鳥獣戯画とは?


今日は面白くも謎の絵巻物、鳥獣戯画について紹介しましょう。

鳥獣戯画は、日本の古典美術の中でも特にユニークで魅力的な作品として知られています。
この絵巻物は、動物たちが人間のような感情や行動をする様子をユーモラスに描いたもので、多くの人々を魅了してきました。

しかし、その制作背景や作者には多くの謎が包まれています。本記事では、鳥獣戯画の歴史やその謎に迫ってみたいと思います。

鳥獣戯画とは?

鳥獣戯画は、京都市右京区の高山寺に伝わる墨画の絵巻物です。
12世紀後半に制作されたとされる絵巻物です。平安時代末期から鎌倉時代初期の作品とされ、日本の絵巻物文化の中でも非常に高い評価を受けています。

有名な相撲を取るウサギとカエル

絵巻物とは、物語や風景、人々の生活などを連続的に描いた長い紙や布のことを指し、鳥獣戯画もその一つです。

鳥獣戯画は、動物たちが織りなすさまざまなエピソードが描かれており、その内容はとてもユーモラスでありながら、時には世相を反映したり、風刺的な要素も含まれています。
また現代の漫画にも見れる手法を使っていたりなど、「最古の漫画」とも言われています。

作者は不明?僧侶?

鳥獣戯画の最も大きな謎の一つが、その作者です。
絵巻物には作者の名前が記されていないため、長い間多くの研究者や愛好者たちがその正体を探ってきました。

一部には、高名な僧侶や貴族が制作に関与していたのではないかという説もあり、有力な人物は覚猷(かくゆう)またの名を鳥羽僧(とばそうじょう)と呼ばれる、僧侶であったと考えられています。

平安時代後期の仏教の高僧で、絵画にも精通していたと考えられている人物です。 ユーモアと風刺に富んだ戯画が得意であったとされています。

また他には絵仏師である、定智が描いた可能性も挙げられています。 

しかし最近、描かれている動物のタッチや、使用されている紙に違いがあるため、作者は複数人いるという説もあります。

甲巻と丁巻の変化

当時の制作背景や文化を考慮すると、作者を特定するのは非常に難しいとされています。
確定的な証拠は見当たりません。このような謎が、鳥獣戯画の魅力を一層高めているとも言えるでしょう。

漫画の始まりとしての鳥獣戯画

鳥獣戯画は、その連続的なストーリー展開やキャラクター同士の関係性、そしてユーモアの要素から、現代の漫画の先駆けとも言われています。

弓の練習をするウサギとカエル

動物たちが人間のような感情や行動をすることで、読者はそのストーリーに引き込まれます。
盗人の猿を追いかける

また、動物たちを通して人間社会の風刺や批評が織り込まれている点も、現代の漫画やアニメとの共通点と言えるでしょう。このような要素が、鳥獣戯画を時代を超えて愛される作品としています。



鳥獣戯画の構成

鳥獣戯画には、さまざまな動物たちが登場しています。
蛙と兎の相撲取り、狐と狸の変身合戦など、動物たちのユーモラスな争いや騙し合いが描かれています。

これらのエピソードは、単に笑いを取るためだけでなく、人間社会のさまざまな側面を風刺しているとも解釈されています。
動物たちの行動や言動を通して、人間の欲望や愚かさ、そして社会の矛盾を浮き彫りにしています。

鳥獣戯画の構成は、甲・乙・丙・丁と呼ばれる全4巻からなります。内容は、動物や人物を戯画的に描いたもので、当時の世相を反映しています。 以下、各巻の内容について詳しく説明します。

甲巻
様々な動物による水遊び、賭射/賭弓(のりゆみ)、相撲などの遊戯や法要、喧嘩などの場面が描かれています。描かれている萩の植物などから、秋の光景だと考えられています。




乙巻
馬、牛、鷹、犬、鶏、山羊などの身の回りの動物だけでなく、豹、虎、象、獅子、麒麟、竜、獏などの海外や架空の動物も含め、さまざまな動物の生態が描かれています。動物図鑑としての性質が強い巻です。


丙巻
前半10枚は人々による遊戯、後半10枚は甲巻のように動物による遊戯が描かれています。
前半と後半の筆致に違いがあり、別々に描かれた絵巻を合成して1巻とした可能性があります。


丁巻
人々による遊戯の他、法要や宮中行事も描かれています。
他の巻との筆致の違いが際立つ巻です。 


まとめ

鳥獣戯画は、日本のアートや文化における貴重な遺産として、現代にもその価値を持ち続けています。そのユーモアや風刺、そして独特の表現方法は、現代の漫画やアニメーションにも影響を与えていると言われています。

この絵巻物を通して、古代の人々の感性やユーモアのセンス、そして社会の風刺を感じ取ることができるのは、まさに鳥獣戯画の魅力の一つでしょう。

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